イワハシ マチコ
Machiko Iwahashi
岩橋 真知子 所属 スポーツ科学部 所属 職位 准教授 |
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言語種別 | 英語 |
発行・発表の年月 | 2020/04 |
形態種別 | 著書 |
標題 | Paradox and Representation: Silenced Voices in the Narratives of Nakagami Kenji |
執筆形態 | 単著 |
掲載区分 | 国外 |
出版社・発行元 | Cornell University Press |
総ページ数 | 314 |
概要 | 本研究はジャパニーズ・スタディーズの視点から、中上健次(1946-1992)の作品における無告の社会的マイノリティの表象を論じた単著である。特に、英語文学・ポストコロニアル研究者C.G.スピヴァクの地政学的論考を援用する。スピヴァクは西洋哲学を根拠とする言説モデルでは、帝国主義、家父長制、階級制などによって重層的に抑圧される人々(サバルタン)を表象することはできないと指摘する。インド出身者でアメリカの大学教授であるスピヴァク自身、西洋哲学の理論と言説を使うことでしか、主流の社会に「第三世界」の情報を提供できないという矛盾を認識している。これは、部落出身の作家である中上が「書き言葉を持つ者」の権力を自覚し、識字力のない部落民の代弁者となることを自戒しつつ執筆していた姿勢と共鳴する。作家が抱える主流と周縁の二項対立から端を発し、二項対立が生み出すものは差異に過ぎず、差別の根拠とはなりえないことを表明してきた。本研究では、中上作品がいかに被差別者の差異を一元的ではなく、多文化的なものとして称揚したか、また、そうすることで差異を差別と認識しようとする主流社会に批判を与えたかについて考察する。 |